空の安全を伝える事こそ航空業界や沖縄観光の振興につながる

Profile
MRO Japan 山城 宏美(ヤマシロ ヒロミ)さん 34歳

日本初、航空機整備及び修理の専門会社として、2015年に設立したMRO Japan株式会社。MROは、Maintenance(整備)、Repair(修理)、Overhaul(オーバーホール)の略で、高い品質と技術力で空の安全を支え、航空産業や地域社会の発展に努める。

山城さんは、航空業界への憧れから客室乗務員としての経験を持ち、現在は機体整備工場のツアーガイドとして活動。機体整備の重要性や航空業界の魅力を発信している。

Q.普段では立ち入ることのできない機体整備工場。見学ツアーの魅力について教えてください。
#01

普段では見られない整備のお仕事を見学できます。通常の空港で行う整備とは異なり、機体の細部まで徹底的に点検し、問題があれば修理や部品交換を行うドック整備が行われています。皆さんの旅の安全を守るために一生懸命働く整備士の姿や、航空ファンにはたまらない機体部品や専用工具に触れたり、ダイナミックな飛行機の姿を見ることができるのは非常に魅力的です。

Q.山城さんのお仕事の内容についてお聞かせください。
#02

小型機から中・大型機まで最大4機が収容できる格納庫内で、さまざまな航空会社の機体や多岐にわたる整備作業についての説明や、整備士が機体の深層部まで作業する様子を間近でご覧いただくなど、普段では体験できないツアーの内容を、お子様からお年寄りまで分かりやすくガイドするのが私の役割です。特に航空業界を志望する若者や学生、未来溢れるお子様など次世代を担う方々が、整備士に近い視点から航空整備の世界を体験することで、沖縄の航空産業の更なる成長や地域振興に寄与できればと考えています。

Q.山城さんがツアーガイドのお仕事を目指したきっかけについて教えてください。
#03

学生時代から飛行機が大好きで、前職は客室乗務員をしていました。その客室乗務員時代の同期がMRO Japanに在籍していることを知り、見学ツアーに参加して同期に会いに行ったのですが、この機体整備の見学ツアーがあまりにも楽しすぎたので、同期に「私この仕事がしたいのだけど」と相談したのがきっかけです。私には娘がいるのですが、「こんな楽しい仕事がお母さんの仕事なんだよ!」って娘に伝えたくなるほど魅力的に感じたので、それも決め手でしたね。いつか「お母さんの仕事って素敵!」って言ってもらいたいです。

Q.ガイドとして必要不可欠なスキルはありますか?
#04

特別な知識や経験は全く必要ないです。お客様を喜ばせたい!楽しませたい!という気持ちが大切です。ツアー参加者はお子様連れや団体客など様々で、一人ひとり感じ方も過ごし方も異なります。常に心がけているのは一人ひとりに気配りできるホスピタリティと考えます。そのためには事前の準備やチームワークが必要になってきます。飛行機ファンの鋭い質問や動き回るお子様にも対応できる様、日々勉強し、常に整備士さんとコミュニケーションをとっています。個人的にはそんな目まぐるしさすら楽しいと感じてしまうので、本当に飛行機を愛してるんだなと自身で感じています。

Q.見学に訪れる方々へ、どの様な体験をお届けしておりますか?
#05

機体部品や工具に触れたり、整備士の仕事風景を間近で見るのはもちろんですが、このツアーを通じて、普段乗る飛行機の安全がどのように守られているか知ってもらえるよう取り組んでいます。整備士は搭乗される方一人ひとりの安心安全を第一に考え、全力で作業に取り組んでいます。その整備士の表情や言葉、汗、動き、真剣な想いを、ガイドという通訳で皆さんの心へお届けできればと常日頃から考えています。救命胴衣の着用体験は安全啓蒙という点では、特におすすめです。

Q.お仕事の面白さや魅力、やりがいについて教えてください。
#06

飛行機が好きな方や興味のある方が訪れますので、飛行機好きの私としては参加者との触れ合いは幸せの時間です。見学ツアーは整備や機材の内容が日々変化するので、都度参加者と一緒に私自身も楽しんでいます。中には観光目的で県外からわざわざこのツアーのためだけに参加される方もいますので、日々の新しい出会いや交流はやりがいやモチベーションにつながっています。

Q.これまでにとても印象に残ってるエピソードをお聞かせください。
#07

最近では修学旅行生など学生の団体も多く参加いただいてますが、先日ハンディキャップを背負った学童さんのツアーを担当しました。様々なハンディの影響から学校に行けなかったりコミュニケーションが難しい児童とのことでしたが、ツアー当日の児童たちは何も問題もなく私のガイドをとても楽しんでたのを覚えています。「この飛行機どこに飛んでいくの!?」「僕はこっちのプロペラ機が好き!」と楽しそうに話しかけてくるんですよ。そして「お姉さん!ありがとう!」って笑顔で言ってもらえた時、私の仕事は今後の時代や観光を支えていく子ども達に「夢を与えられる」仕事なのだと改めて実感しました。あのキラキラした子ども達の目はとても印象的で、今でも心に残っています。

Q.沖縄観光が日々盛り上がってきてますね。
#08

すごく盛り上がっていると実感します。どこに行っても観光客やインバウンドを見かけ、レンタカー、バス、モノレールも混雑しています。飛行機も全便が飛んでいきましたので、逆に整備する飛行機がなかったくらいです。私たちMRO Japanの事業は、お客様の空の安全を全力で支えることです。沖縄観光が盛り上がり、これだけ多くの飛行機が運航するということは、航空産業や沖縄の観光振興に大いに貢献できていると考えています。

Q.山城さんの今後の目標を教えてください。
#09

沖縄観光で訪れる方々との出会いは非常に大切な瞬間でありながらも、短く一瞬で過ぎ去ってしまう貴重なワンシーンです。この限られた瞬間において、一人ひとりに寄り添ったガイドを提供するために、ガイドとしての役割に留まらず整備や機材に関する知識を増やし、日々小さな努力を重ねて、心に訴えかけるようなガイドを目指しています。そして、ガイドという仕事を通じて、航空産業の発展や観光振興に貢献し、学生や児童など将来を支える皆さんに、航空業界という夢をお届けできればと考えています。それは、以前児童たちが見せてくれたワクワクキラキラとした目を、今後もずっと見続けていきたいからです。